10月2日、イギリスのLCC(格安航空会社)、モナーク航空が航空便の運航とツアー事業を停止すると発表した(CNN.co.jpより)。その規模はイギリス航空業界で過去最大の破たんといわれ、現在約11万人が帰国不能となっている。
このような事態に巻き込まれた時、あなたならどうする?スコットランド・アイラ島や、スペイン・グラナダへの旅行を計画している人は是非この記事を読んでほしい。
LCC事情
ここ1年の間でもドイツのエアベルリン、イギリスのライアンエアーなど立て続けにLCCが経営破たんしている。資金繰り、パイロット不足などが主な理由だ。ちょっと前だが(2010年)マカオのLCCであるビバマカオが突然経営破たんし、日本人も帰国できないという事態に巻き込まれている。
よく覚えていてほしいのだが、LCCはぎりぎりで運航しているのだ。最低限の機材数、最低限のパイロット数をいかに効率でカバーするかがLCCの経営方法だ。機材繰りやパイロットのローテーションがうまくいかずにおこるフライトキャンセルは日常茶飯事、そのことを充分に理解・了承して利用しなければならない。
(注)全てのLCCがそうではないことは断っておく。あくまで過去に破たんしたLCCを例にとった場合である。
LCCを使う危険性
旅程保証という旅行会社の立場から、当社ではこのような事態を避けるためになるべくLCCをプランに組み込まないようにしている。ところが、楽しい旅行プランを立てているときに「危機回避」という概念が薄れてしまう人がどうやら多いようだ。
例えばスコッチウィスキーの聖地、アイラ島へ運航しているイギリス最大のLCCといわれるFlybe。ブリティッシュエアウェイズが共同運航として名前を連ねているが、運航機材とクルーは全て格安航空会社であるFlybeだ。
アイラ島への個人旅行プランを案内する際、当社ではこのFlybeをプランに入れず、フェリーでの移動を案内している。ところがスケジュール優先でスムーズな日程を思い描いていた依頼者は、なんとかアイラ島まで航空機で移動したいと言われる。
このときタイムリーにどこかのLCCが破たんしようものなら、けっして旅行プランにLCCを組み込んでほしいなど言われないだろう。それでなくともアイラ島へは天候不順(スコットランドは季節により濃霧や悪天候であることが多い)でよくフライトキャンセルがある。せっかくアイラ島への出発空港グラスゴーまで来たのにフライトキャンセルになったとしたら、再び運航再開するまで気長に待てるほど、日本人のスケジュールは余裕がないのがほとんどだ。
さらに旅行会社を介することなく、航空券からホテルまですべてインターネットで自身で手配していたら、旅行者にこのようなアドバイスをする人はいない。
同様の例はほかにもある。日本人が良く訪れるスペインのバルセロナとグラナダ間だ。この区間はスペインのLCC、ブエリング航空しか運航していない。アイラ島同様この区間の移動は他の交通機関で案内するのだが、効率を考え依頼者は航空機移動を希望する。慣れない異国で突然フライトキャンセルになったら、添乗員もガイドもいない個人旅行ではどう対処すべきか?そのような危機を回避するため、旅行会社は代替が十分にある他の交通機関で案内しているのだ。
アイラ島、バルセロナとグラナダ間のように短距離ならまだ代替も効くだろう。だが、日本発着のアジア各方面へのLCCはどうか?それこそモナーク航空やビバマカオのように、帰国できない人が出てくるだろう。
そして、そのように運航が不安定なLCCをツアーに組み込んで募集型企画旅行を販売している巷のツアー会社の意図がわからない。オーダーメイド旅行(手配旅行)とは違い、一般にパッケージツアーと言われる募集型企画旅行は「旅程保証」が大前提のはずだからだ。
その一方で、いわゆるベビーキャリアと言われるLCC、例えばジェットスター航空(親会社:カンタス航空)に代表されるような、親会社が定期運航の航空会社はちょっと事情は違うと考える(筆者の個人的見解だが)。フライトキャンセルは親会社が代替輸送し、資金繰りも親会社がバックにある分、突発的な経営破たんは起きにくい。当社のプランでいえば全豪オープン観戦の旅行でメルボルンまでの航空券を選択する際、ジェットスター航空なら少しは安心できるということだ。
LCCはそのバックボーンまで考えておく必要があると言えるだろう。
極力LCCは避けるべき
では旅行を計画する際、どうすればよいか?
結論は「LCCは極力避けるべき」に限る。
でもそれでは効率が悪いとお考えの人には、旅行会社としてこうアドバイスしておこう。
- 他人のブログや体験記にまどわされない
- 旅行会社にアドバイスをあおぐ
- 出来ればインターネットだけで旅行手配をせず、旅行会社に依頼する
(参考:旅行会社に旅行手配を任せるべき2つの理由) - 代替の効く交通機関を考えておく
少し厳しいことを書いているが、国内旅行とは違うのだ。言葉もままならない、頼れる人がいない異国では、最終的には自分で旅程を管理するしかない。航空会社事由による運航停止は旅行会社の免責で、日本にいる旅行会社が手伝えることは限られている。
そしてそれよりも前に、計画時点で「危機回避」について少し考えて頂きたいと思う。
コメント