
今朝、TVで全日空のホノルル線にベンチシートが新たに設定されたという話題を取り上げていました。通常の運賃にプラスαで座席4席をベッドのように利用することが出来るというものです。それを見ていたあるコメンテーターが「これは格安航空券でも使えるんですか?」と聞いていました。
さて、ここで問題です。現在これを読んでいるあなたは「格安航空券」と聞いて、どんなものか答えることが出来ますか?
メディアでは何でもリーズナブルな航空券のことを総称して「格安航空券」としていますが、航空券には条件によって種類があります。この記事では、わかっているようでわかっていない格安航空券についてご案内します。
航空券には大きく分けて3種類ある
現在、航空券には大きく分けて以下のように3種類あります。例えばエコノミークラス、どの航空券を購入しても座る席は一緒ですが、条件など様々な面で違いがあります。
また、ビジネスクラスやファーストクラスにも同じような種類があることはご存知でしょうか?
まずは航空券の種類についてご案内します。尚、ここでは航空券=国際航空券のみとさせていただきます。国内航空券まで含めると、より複雑になってしまうからです。
普通運賃(ノーマル運賃)
IATA(国際航空運送協会)が取り決める各区間ごとの運賃で、ノーマル運賃ともいいます。世界中の航空会社ほとんどが参加している協会なので、IATAが取り決めた普通運賃であれば、行きと帰りの航空会社が違っても構わないというものでした。「でした」と過去形で表現したのは、近年条件が変わって往復とも同一航空会社、または同一アライアンスの航空会社が前提となっているからです。
また、後述の正規割引運賃との境がだんだんとなくなりつつあり、どこまでが正規割引運賃で、どこからがノーマル運賃かその線引きが難しくなってきています。それは、航空会社によってプレミアム・エコノミークラスというものを設定した頃からです。旅行業界、航空業界に携わっている人でさえ、どこからがノーマル運賃か即座に応えることは困難でしょう。
とはいえ、もっとも利用条件がゆるいのがノーマル運賃。例えば
- 予約の変更、取り消しが自由(手数料がかかる場合あり)
- 航空券購入(発券)期限は出発間際まで
- ほぼすべての航空会社で無料にて事前座席指定が可能
- マイレージによるアップグレードが可能
- マイルの加算率は100%
等が挙げられます。
正規割引運賃(PEX運賃)
航空会社ごとに設定する一種の「格安航空券」ともいえますが、区別するためにPEX運賃といわれています。航空会社が堂々と自社の「格安航空券」を販売しているようなものです。しかし、これもIATAの規則に則って設定しているわけですから、厳密に言えば格安航空券ではありません。
航空会社がホームページ上で正式に販売している運賃ですから、その航空会社の条件の範囲内であれば利用条件はフレキシブルです。例えば
- 同一航空会社及びアライアンスグループ航空会社内での予約の変更、取り消しが自由(手数料がかかる場合あり)
- 運賃種別により航空券購入(発券)期限が違う
- 全てではないが無料にて事前座席指定が可能
- 一部マイレージによるアップグレードが可能
- 一部マイルの加算率は100%
などなど。同一航空会社内及びアライアンスグループ航空会社、というのが”ミソ”です。ロンドン往復は日本航空で、又は同じワンワールドのブリティッシュエアウェイズやフィンランド航空も利用可能、ということになります。全日空なら、スターアライアンスのルフトハンザやスカンジナビア航空などでしょう。それぞれどんな航空会社が加盟しているのかは、それぞれのアライアンスのホームページがあるので、ご確認ください。
PEX運賃も運賃種別によりピンからキリまであります。例えばエコノミークラス、航空会社によってはエコノミークラス内に10~15種類くらいの運賃種別ごとの予約クラスを設けています。どれで予約しても座席は一緒、なのにヨーロッパ往復で3万円くらいの爆安運賃(大体が航空会社によるキャンペーン)もあれば、エコノミークラスなのにビジネスクラスではないかと思うくらいの運賃まであります。どれもすべてPEX運賃なのですが、条件によりこれくらい開きがあるということです。
格安航空券(IT運賃)
ここからが本題です。格安航空券はIT運賃(Inclusive Tour Fare)ともいわれるツアー造成用航空運賃ですので、基本的には航空券だけの販売は出来ないことになっています。その条件が崩れ始めたのは1980年代頃、HISの前身のヒデ・インターナショナルが格安航空券と銘打って航空券単体で販売したことで大きな話題となりました。
最近では上述の正規割引航空券との差がほとんどなくなってきており、場合によっては正規割引航空券のほうが安かったりしますので、その存在価値がどんどん薄れてきています。当社が調べてみても、東南アジア行で設定があるものの、北米行きやヨーロッパ行はほとんど格安航空券はありません。
格安航空券には様々な条件が伴います。予約したらすぐに航空券購入(発券)、購入後の変更、取り消しは不可又は多額の手数料がかかる、マイルは100%加算されないか全く加算されないなど、これまた航空会社により様々です。
同時に本来のIT運賃の条件であるツアー造成用運賃という条件が復活しつつあります。旅行業界でいうところの企画旅行に含まれ、必ず滞在先の宿泊や観光、移動費用と合わせて販売することが条件になり、航空券だけでの販売が規制されるようになってきました。
つまり、巷で流通している「格安航空券」というのは、現在においてはツアー造成用運賃の航空券ではなく、ほぼ航空会社による正規割引運賃ということになります。ただし、まだ残っている一部の本来の格安航空券も、旅行形態や予算によっては十分利用価値はあるので、航空券には3種類あることを覚えておいてください。ここから先はいわゆる「格安航空券」のことを「格安航空券(IT運賃)」と表記します。
航空券はどこで購入すればいい?
さて、航空券には3種類あることが分かったとして、自分の旅行の時にはどの航空券を選ぶのが最適か、またそれはどこで購入すればよいか?当然気になりますね。
もし自分の旅行形態には格安航空券(IT運賃)が最適だとしたら、これは旅行会社しか販売していないという事実を知っておいてください。航空会社のホームページでは格安航空券(IT運賃)は販売していません。
なぜなら格安航空券(IT運賃)はツアー造成用航空券なので、航空運送のみを行う航空会社ではツアーを造成していないからです。また、航空券検索サイトも旅行業登録をしているサイトなら良いですが、そうでないところで販売している格安航空券(IT運賃)は、実は正規割引航空券だったりするので誤解のないように。
上記を踏まえると、「航空券は旅行会社で購入するのがベスト」ということ。
どの旅行会社でも旅行の目的、形態、マイレージその他の条件をお伺いし、お客様に最適な航空券をご案内します。
あまりメディアに踊らされることなく、最適な航空券を利用してください。航空券の定義があまりにも曖昧になっているようですので、こんなことを書いてみました。
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