
フランス、ミディ=ピレネー(現在はラングドック=ルシヨンと統合され、ラングドック=ルシヨン=ミディ=ピレネーとなった)の中心都市、カオールは「黒いワイン」と呼ばれるカオールワインとフォアグラで有名なグルメの町だ。
ミディ―ピレネー周辺には「フランスの美しい村々」が点在しているので、スケッチツアーの周遊拠点として何度か宿泊している。
そしてここカオールでは、思い出のホテルとそのホテルでの食事がとても素晴らしかったので紹介したい。
フランス料理は豪華なものばかりではない
そもそもフランス料理というと、たいていの人は金縁の高そうな皿にちょっぴり食べ物(たいていフォアグラや鴨のオレンジソースなどだ)が載っているだけ、その周りにわけのわからないソースが絵を描くようにかけられているものを想像するに違いない。
何かの記念日に奮発してフレンチレストランでディナーといった時に出てくる、あの皿だ。
あるいはバブルを経験している人なら意中の人のハートを射止めるため、日本に出店したフランスの名店へこぞって食事に誘う、そんなことを思い出すかもしれない。
だがフランスの、それも田舎の村を訪れると、そんなフランス料理は出てこない。地元の人たちが地産地消で食べている料理ばかりだ。
日本でもその地方地方で特色ある素朴な食事を楽しむことが出来ることと同じである。下記記事で紹介したロカマドゥールも同じミディ=ピレネーなので、この地方の特色がよくわかるのであわせて読んでほしい。
さて、カオールでは最初に宿泊したホテル(20年も前のことだ)にあまり記憶がない。
いわゆるBed & Breakfastタイプの3つ星ホテルで、ホテル内で夕食を取ることはできないため、毎晩ホテル近くのレストランに出かけて行った記憶がある。
そのとき町をロケハンして、とても素敵なホテルを見つけた。そのホテルの前まで行くと、自分が泊まっているホテルと同じ3つ星クラスだった。
同じ3つ星でこうも違うのかと思ったそのホテルが、Hotel Terminusだった。
後々調べるとカオール内で有名なレストラン兼ホテルらしい。次にカオールを訪れるときはぜひここを指定して手配しようと思った。
Hotel Terminus – Restaurant Le Balandre(現:The 1911 Bistro)
その後、もう一度カオールを訪れる機会があったが、その時は予算や人数の都合上別のホテルに宿泊した。
そして三度カオールをツアーに組み込んだときにHotel Terminusの事を思い出し、ツアーオペレーターにこのホテルを指定して手配するよう指示をした。ある意味自分が行きたいから手配したようなものだ。
だが言い訳はつく。
言い訳の一つ目はロケーションが良いこと。カオール駅に近い広場に面しており、カオール市内へスケッチに出かけるのにちょうどよい。
そして二つ目は日本人が必ず求めるバスタブ付の部屋を確保できることだ。
そしてようやくツアーでHotel Terminusを訪れることが出来た。3つ星クラスなのに、スタンダードルームで十分な快適さと調度品の品の良さだ。レセプション、廊下、ホールはぬくもりを感じさせる木目調で統一されていて、いつの時もくつろぐことが出来る。
Le Balandreは食事のみでも訪れることが出来るレストランだ。このホテルに3泊し、3晩ともLe Balandreで食事をした。
事前にオペレーターから連絡があったメニュー以外に、ワインのおつまみとして先に一皿出てくる。
そしてどの皿もいわゆるフランス料理だ。
最初に「フランス料理は豪華なものばかりではない」と書いていながら、実に日本人が想像する「ザ・フランス料理」のオンパレードである。
一皿一皿とても丁寧に作られて出され、これがはたして団体向けのメニューかと思ってしまう。しかしけっして高いものではない。
ツアー費に含まれるものだから詳細は分からないが、ホテルのウェブサイトを見てもそれぞれはほどほどの値段だ。きっと地元の人たちが普段利用するレストランのひとつなのだろう。
そのメニューは以下の通りだ。レストランはとても素敵な間接照明でほの暗かったため良い写真ではないが、お許しいただきたい。
1日目

お通し キャビアを少々

前菜 サーモンのタルタル

メイン ロースト・ダック・フィレ “ドフィネ風”

デザート 季節のフルーツグラタン
2日目

お通し 小ぶりなミートパイとメロン

前菜 カリフラワーのスープとトマトのクリーム “ライジングサン”

メイン サーモンステーキとハツのパイ包み

デザート フォンダン・ショコラ
3日目

お通し 前日とは違うミートパイ、豆のスープとメロン

前菜 2種類のダックのパテ

メイン ラム肉のケルシー風、クルミを載せた焼きトマト

デザート シェフのおすすめデザート
なんだかフランス料理を落としてみたり、持ち上げてみたりとまとまりのない内容となってしまった。
だが、旅先で食したフランス料理は豪華というよりはその土地を感じる味であったことは間違いない。
そしてどの料理にもカオールワインがよく合う。最初に訪れた時カオールワインをとても気に入ってしまったため、ダース単位で日本に別送したほどだ。
もしカオールを訪れる機会があるなら、このHotel Terminusに宿泊し、一度は夕食をホテル内レストランLe Balandreで味わってほしい。
常々申し上げている通り、旅先のグルメはその時の環境、出来事、一緒に食べる人たちに左右されることが多い。その時その時で「うまいッ!」といえるのは、実に幸せなことだ。
コメント