このシリーズの1回目、2回目を読んでくれた人の中には、
「仕事にかこつけて、この添乗員はなんて豪華な食事をしているのだろう」
と思う人がいるかもしれない。
「添乗飯」と銘打ったくらいだから、もう少しリーズナブルでありながら、美味しい食事を紹介してもよさそうなものだろう。
それなのに、すでに書かれたメニューは、トリュフやら鴨のフォアグラやら、名前だけで豪華そうなものばかりだ。
しかし、1回目の記事に書いたように、この記事はお客様と同じ団体食を、一緒のテーブルで食べることを前提として書いている。
言ってみれば、ヨーロッパのツアーでは通常どんな食事がでるのか、そしてその土地土地でどんなものが提供されるのかを、添乗員の目線で書いているものである。
また、その食事にまつわる地元の人たちとの交流や、エピソードを交えることによって、紹介した土地へ、1人でも多く訪れる人が増えることを望んでいる。
昨今、海外旅行へ出かける人が少なくなってきている。
便利なデジタル機器(PC、スマートフォン、TVなど)が身の回りに増えた今、まるでそこにいるかのような美しい映像を、気軽に見ることが出来るからだろう。
だが、今のところ美味しい食事の香りや湯気、そしてそれを囲む楽しい雰囲気までは、そういった機器では伝わらない。
そこに出かけるからこそ得られる感動を、少しでも多くの人に知ってほしいため、これからもこんな記事で良ければ書き続けたい。
イタリア・ピエモンテ州 ガレッシオ
ガレッシオのことは、「私が訪れたイタリアの美しい村々 – ガレッシオ ピエモンテ州」で町の様子などを書いているので、合わせて読んでほしい。
筆者にとって、宿泊した「Hotel Giardino」と、そのオーナーのことを抜きに、ガレッシオのことを書くことは出来ないくらい、ガレッシオでの滞在の記憶とホテルは密接に結びついている。
ここでの食事は、3泊全てホテルでの食事だった。
紹介した記事にも書いている通り、このホテルはほとんどオーナー一人で切り盛りしている。
3つ星クラスなので、一応英語が通じることになってはいるが、どうもあやふやな英語だ。こちらもあまり流暢とは言えないが、それ以上である。
しかし、ゲストのリクエストに応えようと一生懸命に動く。
アルバと同じピエモンテ州にあるガレッシオは、やはりトリュフが名物だ。
初日の夕食時、お客様と筆者、そしてドライバーのロベルト(初日から最終日まで通しで、バスを運転してくれたクレモナ出身のドライバー)がテーブルに着いたと同時に、オーナーはメニューの紹介とともに、自分の指の匂いを筆者にかがせた。
いきなり何をするのかと思いきや、その匂いはトリュフオイルだった。
夕食の準備をしていたトリュフオイルまみれのまま、食堂に来たことになる。
この日のメニューは
で、トリュフオイルは、ラザニアに合わせて用意されたものだった。
オーナーは食事中終始ニコニコしながら、この地に日本人が訪れたのは初めてのことだということ、明日市長がホテルに表敬訪問を予定していることなどを話してくれた。
そして実際、新聞記者まで同行して記念撮影し、われわれ日本人が地元の新聞に載ってしまったほどだ。
途中、どうしても英語で伝えにくい時は、ドライバーのロベルトが通訳に入り、英語にして筆者に伝えてくれた。
このオーナーとお客様の間には、2人の通訳が入ったことになる。
ガレッシオはランチが大変
ここガレッシオは、日中旧市街を歩いても、あまり人に出会わない。そして、ふらっと入れそうなレストランが見当たらない。
ツアー中の昼食は、ほとんど自由昼食だ。
例によって、昼食はゆっくりレストランで食事をしたいというお客様のためにも、ホテルや旧市街近辺で使えそうなレストランを抑えておきたいのだが、まるっきり見当たらないのだ。
そこで、唯一頼れるホテルのオーナーに、この近所にランチを食べられるレストランがないか聞いてみた。
すると、ホテルでランチを用意できるとのこと。
さっそく数人のお客様と筆者で食事をしたい旨を伝えると、すぐにメニューを持ってきてくれた。
用意が出来るということは、ランチ用の仕込が出来ていたということだ。
こんな小さな村の旧市街に1軒しかないホテルは、レストランも兼ねていないといけないのかもしれない。
日本人の口に合いそうなものを選び、パスタと豚肉のソテーとサラダを選んだ。夕食は結構ヘビーなものが多いので、軽めの食事だ。
パスタはトマトソースのシンプルなものだったが、さすがはホテルのレストラン、アルデンテ具合や味は申し分ない。
ホテルだから、この食事代は部屋代につけておくことが出来る。
けっこう便利だ。
結局、3泊中朝、昼、晩と全てホテルでの食事となった。
最終日の夕方に、新市街を一人で探索に出かけてわかったのだが、地元の人達の普段の食事や買い物は、ほとんど新市街にそろっているようだった。
スケッチを目的としたお客様に、絵にならない新市街はさほど必要ない。
今回は、特別豪華な食事ではなく、ツアーで提供される団体食そのものだ。しかし、ホテルオーナーの気遣いと楽しい会話により、毎日が美味しい夕食だった。
ちなみに、紹介したHotel Giardinoは、ウェブサイトがない。また、インターネット環境が全くない。現代の機器から隔離されて、中世の村に迷い込みたいと思ったら、ここガレッシオを訪れたらいいかもしれない。
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