ハイキングが盛んなヨーロッパには、全欧を網羅するハイキングルート、E-paths(以下Eパス)があります。 このルートは、ヨーロッパ・ハイキング協会(以下ERA)が検証した、安全で自然保護の配慮に沿った質の高い長距離ルートです。
さらにEパスより距離が短い、ERAが推奨するワールドクラスの「Leading Quality Trails – Best of Europe(以下LQT-BE)」があります。
ヨーロッパのハイカーたちが認めたハイキングルートを知ることにより、ヨーロッパ・ハイキングがより充実したものになります。
Eパス(E-paths)とは

(ERAウェブサイトより)
冒頭にて触れた通り、ヨーロッパ・ハイキング協会が検証した、ヨーロッパ中を網羅するハイキングルートのこと。 南北は北極圏からクレタ島まで、東西は大西洋からカルパティア山脈や黒海までを結ぶ、ヨーロッパ大陸を縦横に走る長距離ルートを指します。
75,000キロ以上に及ぶEパスは、12のルートに分けられ、ERA独自の標識が設置されています。標識についての詳細は英語のみになりますが、以下のページで見ることができます。
Eパスのサイトは日本語でも閲覧することができ、ページ内でE1からE12まで詳細に見ることができます。
ただし、それぞれのルートはとても長距離のため、たとえひとつでも1回の渡欧で完走することは困難です。
まずは、Eパスの存在を知っておいてください。
ヨーロッパのベスト・クオリティ・トレイル
Eパスよりも短く、目的を持って歩くことができるのが、ベスト・クオリティ・トレイル(Leading Quality Trails)です。
Leading Quality Trailsは、
- Day Walk(日帰りルート)
- Best of Europe
の2つに分かれています。
Day Walkは4〜25キロの1ステージからなる、文字通り1日で歩くことができるハイキングルートです。現在、デンマーク、ベルギー、ルクセンブルク、ドイツの4カ国、計15のルートが認定されています。
一方、Best of Europeは、総距離50キロ以上、3つ以上のステージがあり、複数日にわたるテーマ別ハイキングルートです。北はスウェーデンから南はギリシャまで、現在計23のルートが認定されています。
ここでは、Leading Quality Trails – Best of Europe(LQT-BE)を取り上げ、もう少し詳しく掘り下げてみます。
LQT-BEの認証基準
すべてのLQT-BEは、ERAの経験豊富なハイカーによって、統一された厳格な基準に基づき認証されています。 この認証により、世界クラスの基準を満たすトレイルを歩くことが保証されます。
(以下、LQT-BEのパンフレットを和訳して引用)
LQT-BEの認証条件
ヨーロッパ長距離ルート(Eパス)を除いて、LQT-BEの認証条件は、50キロの距離と3つのデイリーステージが設定されていることです。そして、最低距離が満たされている限り、一部区間での認定が可能です。
LQT-BEのサスティナビリティ
LQT-BEの認証を受けようとする者(提案者:LQT-BEの認証を受けようとする地域や自治体)は、以下を遵守することが前提となります。
自然保護
提案者(LQT-BEの認証を受けようとする地域や自治体)は、トレイルのルートがすべての環境保護規制(特に自然保護区、生物生息空間などの敏感な地域において)に準拠していることを確認します。
メンテナンス
提案者は、認証の有効期間全体を通じて、トレイルの路面および設備の維持管理が確保されることを保証します。継続的な定期点検と維持管理は文書化され、ERAに提出されなければなりません。ERAの道標設置の基本原則が適用されます。
有効期間
認証期間は証明書の交付日より開始し、3年間有効とします。
協力体制
提案者は、トレイル地域における品質プロセスに関わる全ての利害関係者を、初期段階から関与させる必要があります。関係団体には、森林管理機関、国立公園野生生物保護局(NPWS)、観光団体、登山組織、ウォーキングクラブ、土地所有者、地方自治体、地域コミュニティなどが含まれます。
LQT-BEの選択基準と中核基準 – 概要
トレイルルートは、
- 4km区間(=歩行時間約1時間)
- 1日区間
- ルート全長
の3つのレベルで審査されます。
この多角的評価により、ルート全体が魅力的であり、歩行観光客に可能な限り多様な体験を提供することが保証されます。各4km区間は、以下23の評価基準を用いて評価・判定されます。
完全認定を得るには、各4km区間が選択基準で11ポイント以上を獲得する必要があります。全行程および全日次区間において、全ての核心基準を満たすことが必須です。
トレイル路面形式 1. 自然トレイル
人工的な補強を施さず、自然のままに整備された歩道で、歩きやすいこと少なくとも1,000m、2,000m以上は2倍にカウントされる 2. 強化されたトレイル
人工的に舗装されていない路面を持つ小道3. 不均一だが通行可能な道
例:荒れた緩い石や岩、ひどく浸食された道最大300m以内 4. 舗装面
アスファルト、コンクリート、舗装路最大500m以内 5. 歩道
幅1m未満の小道
5.-1 自然歩道:人工的に整備されていない歩道
5.-2 安全対策が施された歩道および歴史的石畳の歩道合計で少なくとも500m
1,500mを超える場合は2倍にカウントされる6. 交通量の多い道路
安全対策が施されていない横断歩道を含む最大50m以内 7. 交通量の多い道路沿い
道路脇の1車線まで最大300メートル以内 トレイル・ルーティングシステム/ビジターガイディング 8. 標識
ERA道路標識の基本原則に準拠している限り、国際標識システムの承認を受けることができる完全で、欠落がなく、正しく整列されかつ誤りがないこと 9. 道標
目的地、方向、距離、時間、番号、トレイル識別マークなどの詳細少なくとも2つ 10. ネットワーク
他のウォーキングトレイルとの連携少なくとも2つ 自然、風景 11. 多様性
明確に異なる景観の形成少なくとも3つ 12. 自然な静けさ
機械や交通の騒音がないこと少なくとも連続1,000m 13. 魅力的な自然景観
特殊な生物生息地や地質景観、印象的な森林、海岸景観、岩層、園芸地域など少なくとも1(それ以上は2倍) 14. 自然水域
例:天然の井戸、小川、川、湖、湿原など少なくとも1(それ以上は2倍) 15. 自然美のポイント
例:山頂、峡谷、渓谷、岩、洞窟、滝、自然遺産少なくとも1(それ以上は2倍) 16. 素晴らしいパノラマ
遮るものがない眺望(最低3年間保証)最低45度の視界と2,000mの視界少なくとも1(それ以上は2倍) 文化 17. 魅力的な都市風景
例:旧市街、代表的な建物や広場、田舎の村の風景少なくとも1(それ以上は2倍) 18. 地元の観光名所
地元や地域にとって重要な文化的・歴史的遺跡少なくとも2 19. 国の名所
例:城、修道院、国定記念物少なくとも1(それ以上は2倍) 文明 20. 高度に開発された環境
密集した市街地、工業団地、水処理施設最大300m 21. サービス提供
正午から営業し、少なくとも週5日営業している飲食店またはケータリングサービス店少なくとも1 22. 公共交通機関または民間交通機関のアクセスポイント
定期運行、少なくとも2時間に1本の接続少なくとも1 23. 休憩場所
例:ベンチ、ピクニックテーブル、サービスエリア、小屋など少なくとも2
以上の通り、LQT-BEとして認証されるためには相当厳格な基準に照らし合わせて審査されます。
それだけに、現在選ばれている23のルートは、どれもハイカーなら一度は歩いてみたいルートばかりです。
次回から、LQT-BEに認証されたルートの中から、
- レッヒヴェーク(Lechweg)
- モーゼルシュタイク(Moselsteig)
- ロタ・ヴィセンティーナ(Rota Vicentina)
をひとつずつ取り上げ、詳しく掘り下げます。この3つのトレイルは、当社ヨーロッパ・ハイキングツアーにて歩くことができるルートです。
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