ソスペル・フランス ~ 魅力ある無冠の町

ソスペル
フランスでありながら、限りなくイタリアに近い町並み、それがソスペル。マントンから曲がりくねった山道を入ると、「ここがニースやマントンと同じコート・ダ・ジュール地域圏か?」と疑問に思うほどの山間の町だ。
ソスペルはガイドブックにも載っておらず、フランスやイタリアの美しい村にも認定されていない無冠の町。けれども、中世以来フランスにとってもイタリアにとってもたいへん重要な町だった。そんな歴史を重ねてきたソスペルを訪ねた。

    この記事の目次
  1. フランスとイタリアを塩で繋いできた町
  2. まるでイタリアのようなフランスの町
  3. Hotel des Etrangers

フランスとイタリアを塩で繋いできた町

かつてトリノ(ヴァンテミーユ伯)の支配下にあったソスペルは、自治を求めてニースのプロヴァンス伯に保護を求めた。そしてプロヴァンス伯の領土の一部となったソスペルは、ニースの行政上重要な町となった。
しかし、アヴィニヨンとローマ双方にローマ教皇を置こうとしたことが原因で起きた教会大分裂により、その引き金となったソスペルは戦乱に巻き込まれた。この長く続いた戦乱を収め、ニースとその支配下のソスペルを手中にしたのはイタリアのサヴォイア家だった。これによりフランスとイタリアとの間で自由な商取引が可能となった。
(この辺はウィキペディアに詳しく書かれているのでそちらを読んでほしい。)
商取引の中心は塩。いつの時代も塩は重要で、ソスペルはフランス~イタリア間の「塩の道」の関所の役割を果たしていたという。

キリスト教徒ではないのでこの歴史を肌で感じ取ることはできないにしても、フランスとイタリアを結ぶ重要な町であったことは間違いない。そしてその関所の役割を果たしていたのが、町を二分するLe Pont Vieux(ポン・ヴュー)だ。13世紀にさかのぼるこの橋は、ヨーロッパ最古の要塞化された橋として知られる。
ポン・ヴュー
橋の真ん中には建物があり、そこが関所だった。

まるでイタリアのようなフランスの町

歴史がソスペルを作ってきたように、ソスペルはフランスとイタリアを繋いできた町だ。ソスペルの行政区の外れは国境で、その向こうはもうイタリア。だからなのか、建物はイタリアの町並みのようにカラフルだ。
聖ミシェル聖堂
町を守るのは聖ミシェル聖堂、このファサードも黄色とピンクを基調にしたカラフルなバロック様式の教会だ。
ソスペルの町並み
一方、街中では赤壁の建物が多い。

ソスペルはニースから鉄道で約50分で訪れることが出来る、交通の便が良い町でもある。ニース始発の各駅停車で、これまたイタリアとの国境近くの町タンド(Tende)行きの列車に乗ればよい。町の中心にある駅も赤壁の建物だ。
ソスペル駅
駅の横には古びたWagons-Lits社製の寝台列車車両が横たわっっていた。かつては国際寝台列車として使用されていたはずのものだ。車両横に書かれている"YATAKLI-VAGON"とは、トルコの寝台列車を指す。Wagons-LitsとYATAKLI-VAGON、この2つの言葉から想像できるのはオリエント急行だ。かつてパリ~イスタンブール間を運行していた豪華国際寝台列車はアガサ・クリスティの小説でも知られ、今はベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレスとして形を残している。
Wagons-Lits in Sospel-1
Wagons-Lits in Sospel-2
筆者の会社でこの有名な寝台列車の予約・手配を取り扱っていることを思うと、ソスペルという町に俄然親しみを感じる。

Hotel des Etrangers

宿泊したのは町で唯一の大型ホテル、Hotel des Etrangers。2つ星だがとても気持ちよく滞在できるホテルだ。駅にも近く、個人旅行で利用しても良い。
Hotel des Etrangers
スケッチを目的としたお客様のグループを連れて訪れたことで、ホテルのオーナーはとても珍しがって毎日お客様一人一人に声をかけてくれた。日本人が来ることは初めてではないとのことだが、芸術の国フランスへスケッチをしに日本人が訪れたということがうれしかったらしい。

こちらからオーダーしたものではないが、ある晩テーブルに人数分のワインが置かれていた。ワインのラベルにはその日の朝ホテル前で撮ってくれた集合写真がプリントされている。それを一人一人にプレゼントしてくれたのだ。
プレゼントのワイン
またある朝、ホテルオーナーが一人のソスペル住民を紹介してくれた。毎日大きなジャーマンシェパードを連れて散歩していたおじいさんだ。聞くと、この人はソスペルで柔道のチームを運営しており、日本に柔道合宿に行きたいのだそうだ。その後、滞在中に街中でちょっとした打ち合わせをして帰国となり、メールで何度かやり取りをしたのだが、予算の都合上この計画はかなわなかった。

しかし、ホテルのオーナーといい柔道チームを持っているこのおじいさんといい、とても日本人と日本を大事にしてくれる町だと感じた。

個人的な感想だが、世界遺産や美しい村の認定がなくても訪れるべき町や村は星の数ほどある。大都市はどの国も似通っていてその国を感じることはできないが、その先にある小さな町や村は、訪れる国を肌で感じさせてくれる。
鉄道で容易に行きやすい町ならなおさら、旅行途中に足を延ばして訪れてほしい。無冠の町は、冠に惑わされない本当のその国を感じることが出来る。
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