少し前の話になりますが、「いま空港でトラブル続出…日本人の若者の7割がじつは知らない?「パスポートの落とし穴」」というニュースがあったのを覚えているでしょうか?
旧Twitterのトレンドワードにも入ったので、記憶にある方も多いことでしょう。
このニュースは、海外旅行では渡航国ごとにパスポートの残存期間があり、それを満たさない場合は入国できないので、出発空港で搭乗を拒否される、という話です。
旅行会社スタッフなら当たり前に確認すべき渡航情報のひとつですが、記事のとおり「日本人の若者の7割がじつは知らない?」としても、さほど不思議ではありません。というか、日本人全体でも、このくらいの割合で知らないのではないでしょうか?
そして、気になったのは、記事中にあった「エアチケットとホテルをネットで予約し」という記述。
航空券とホテルがセットで簡単に予約できるのが、エクスペディアやブッキング・ドットコムといった、オンライントラベルエージェント(OTA)です。しかし、パスポートの残存期間やその他必要な渡航情報を、「日本人の若者の7割がじつは知らない」ままOTAで旅行を予約したら、このような事案はたびたび起こってしまいます。
では、OTAは、渡航情報に関してどれだけていねいに案内しているか、各ホームページから検証してみました。
エクスペディアは比較的親切な渡航情報記載
エクスペディアのホームページを一番下までスクロールすると、カスタマーサービスの項目のひとつに「海外旅行の要件」というリンクがあります。ここをみてみると、
- パスポート
- ビザ
- ESTA及びETA
- 未成年が南アフリカに渡航する場合
といった注意喚起の文章が書かれています。
これを見れば、最低限注意しなければならない項目だということがわかり、旅行を申し込む人は個々に調べるでしょう。
ただ、「パスポート」のリンクを見てみると、外務省ホームページの「ビザ」のページにジャンプし、上記のような残存期間のことに気づかない場合もあります。もちろん、渡航先国の大使館または領事館のビザに関する記述まで辿り着けば、
- ビザの申請が必要な方
- ビザ申請に必要なパスポート情報(残存期間や査証ページ数に関する件)
- 申請方法
- 申請日数
などがわかります。
次に、「ビザ」のリンクをクリックすると、またもや同じ外務省ホームページの「ビザ」のページにジャンプするあたり、少々雑な感じがします。
その他、外務省海外安全ホームページへのリンクがあり、何もインフォメーションしてくれないOTAよりは、まあまあ親切なのではないかと思います。
比較的老舗感のあるOTA、ホテルズ・ドットコムは、エクスペディアと同じグループ会社で、本社はアメリカにあります。こちらはホテルに特化しているからなのか、渡航情報については何の記載もありません。
オランダ発らしい、おおらかな情報提供のブッキング・ドットコムと同グループのアゴダ
お次は、最近宿泊業者への未払い事件で話題になっている、ブッキング・ドットコム、なんか、それだけで不安になってしまいます。
こちらも、ホームページを一番下までスクロールしてみましたが、どこを見れば良いのかわかりません。
「カスタマーサービスのヘルプページへ」というリンクは、「よくある質問」ページにジャンプします。
「安全に関するリソースセンター」が近いのでは?と思いクリックすると、ようやくそれらしいページに辿り着きます。ここで「旅行者向けリソースをチェック」をクリックします。表示されたページの「安全な目的地を選ぶために」という項目が、渡航情報らしき「リソース」なのでしょう。ここで、
- 現地での必要事項を確認しましょう
- 安全に関する法律や規制を確認しましょう
- 新型コロナウイルス(COVID-19)による規制を確認しましょう
という3つの項目があり、その先のリンクがあるのはコロナウイルスに関する件だけ。「あとは自分で調べてください」という意味でしょうか?
入り口がわかりにくく、かつそのページから必要な情報が得られないのでは、単なるホテルサイトでしかなく、OTAと呼べるのでしょうか?
ブッキング・ドットコムの本社はオランダにあり、オランダらしいおおらかさがページ全体に漂っています。
ちなみに、最近TVCMでお馴染みのアゴダは、ブッキング・ドットコムと同じ、Booking Holdingsのグループ会社。ブッキング・ドットコムと同じような情報提供かと思いきや、渡航情報に関するインフォメーションは一切書かれていません。
あれだけTVCMを流しておきながら、こと渡航方法の告知関連については、不親切さを感じます。
日本の会社と間違えそうなトリップ・ドットコム
世界最大級のオンライン旅行会社という会社概要ですが、日本ではエクスペディアやブッキング・ドットコムから少し遅れた感じがするOTA。シンガポールが本拠地です。
ここのトップページを見ると、まるで日本の会社のサイトのような作りで、よく調べないと海外の会社とは思えません。
ですが、こと渡航情報のインフォメーションについては、何も書かれていません。ページの一番下に、外務省海外安全ホームページのリンクがあるだけ、渡航情報は自己責任で、ということでしょうか?
すでに紹介した2社も、渡航情報を調べることは自己責任とはなっていますが、そこに辿り着くヒントのようなものは書いてあります。トリップ・ドットコムは、それさえも外務省まかせ。
海外では、これが当たり前なのでしょう。
これが日本のサイト、楽天トラベル
日本のOTAも見てみましょう。ホテルと航空券といったツアーまで予約できる楽天トラベルは、さすが日本人のためのサイトといった感じです。
ページ下のお知らせの「安全な旅を楽しもう – 安心に旅行を楽しんでいただくために」というリンクでは、アフターコロナを考えた旅の提案をしています。
その中で、「海外渡航情報」という項目があるのでみてみると、コロナウイルスによるとこう制限情報や、国別の渡航情報を用意しているあたり、冒頭の記事のような7割の若者たちに焦点をあてたページ作りになっています。
ですが、よくよく見てみるとパスポートやビザ情報については書かれていません。主に、コロナに関する情報ばかり。
ん、筆者が見落としたのでしょうか?
もう一度、トップページから見てみると、海外旅行のページにジャンプしたのち、左側にある「お知らせ」にありました。
主にビザに関する記載ですが、ちゃんと外務省海外安全ホームページへのリンクもあります。
トップページは、国内旅行の案内ページだったので、記載されていないのでしょう。
海外旅行はネット予約か、旅行会社経由か
主なOTAのホームページをチェックしてみましたが、表示方法が曖昧もしくは違ったり、小さな字だったりで、冒頭のニュース記事のようなカップルが、事前に旅行先の情報を調べようという気にはならないようなページ作りになっています。
これでは、同じようなトラブルは今後も続くでしょう。ネットでの旅行予約は、全て自己責任、自分でとことん調べることが重要です。
一方、旅行会社では、お客様から旅行の申し込みを受けたとき、
- 渡航国のビザ情報
- パスポートの残存期間
は最低限、チェックします。
どの会社でも、申し込み時に「申込書」と「渡航お伺い書」(2つが一緒になっている会社もある)といった、個人情報を記入する書類を書かされると思います。そこに書かれた情報、主に生年月日とパスポート情報で、旅行会社はこの申し込みを受けて良いか、あるいは準備する時間があるかをチェックします。
国によっては、友好関係ではない国への渡航履歴があると、入国が許可されない場合もあります。バックパックでさまざまな国を渡り歩いている人は、要注意です。
ヨーロッパのように、数カ国周遊の場合は、それぞれの国について調べなければなりません。
ネットでの旅行予約は便利ですが、こと海外旅行となると、調べなければならない情報はかなりあります。リアルな旅行会社なら、申込書に必要事項を記入すれば、旅行会社で必要情報をチェックしてくれるという利点もあります。
海外発のOTAは、別の視点からも利用について注意が必要です。そのことは、以下私的なブログで書いていますので、参考にしてください。
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