ブランシオン|私が訪れたフランスの最も美しい村々(番外編)

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ブランシオン1

「フランスの最も美しい村々」を紹介し始めてまだ2回だが、今回番外編として紹介したいのは、ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏、ソーヌ=エ=ロワール県のブランシオンだ。

実のところ、ブランシオンは「フランスの最も美しい村々」には登録されていない。

にもかかわらず紹介するのは何故か?

「フランスの最も美しい村々」には厳しい審査条件があり、遺産の重要性、村の区画整備状態、遺産活用の適正度の3点を基準に、さらに細かく条件を細分化している。

単なる観光のためのテーマパークとならないよう、厳しく審査しているようだ。

これは筆者の想像だが、ブランシオンは村の区画整備状態という点において、登録基準を満たしていないのではないかと思った。

確かに訪れた時村は少し荒んだ状態で、訪れる者を迎える状態にはないように思えた。

それでもブランシオンは美しい村に充分値すると勝手に思い、紹介しようと思う。

きっかけは一冊の紀行本

訪れたことがない村や町をツアーに組み込むには、十分な下調べが必要だ。

その際活用するのは、様々な書籍である。

ブルゴーニュ地方の美しい村のツアーを企画する際参考にしたのは、この業界の大先輩、菊間潤吾氏著書の「フランスの美しき村(新潮社)」だった。

「フランスの美しい村々」に登録された村は、ミディ=ピレネー周辺と、このブルゴーニュ=フランシュ=コンテ周辺に集中している。

菊間氏の書から、数多くの美しい村の中でスケッチのモチーフになりうる村を選択しているときに、目に入ってきたのがブランシオンだった。

とても小さく素朴な村で、特筆すべきものは何もないかと思われたが、唯一菊間氏に

「天国にいちばん近い教会」

と言わしめた、サン=ピエール教会の写真がそこに掲載されていた。

その言葉と写真に引き寄せられ、ツアーに組み込んだのだ。

「天国にいちばん近い」という言葉は、よくニューカレドニアを表現する言葉として知られている。森村桂の旅行記「天国にいちばん近い島」が、その代表だ。

だが、菊間氏の著書では、なぜ彼がそう思ったのか詳しく書かれていない。

それを確かめるためにも、訪れるべきと考えた。

スケッチのモチーフにならなくてはならないことはもちろんだが、個人的な興味のほうが大きかったのである。

天国にいちばん近い教会

ブランシオンへは、滞在先のオータンから、次の滞在先クリュニーへの移動の際立ち寄った。

ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ周辺には、美しい村が点在していると説明したが、なぜかオータンからクリュニーへの移動途中には、スケッチのモチーフとなりそうな美しい村がなかった。

そのせいもあって、ブランシオンは格好の立ち寄り場所でもあったのである。

村に近づくと小高い丘があり、その丘の頂上にへばり付くように見えるのがブランシオン城だ。

かつての領主ブランシオン家が12世紀に建てた城で、エジプトや近隣のクリュニーとの長い戦争に苦しんだ歴史がある。

城壁に沿ってその丘をあがっていくと、こじんまりとした村が見えてきた。

城から村全体を撮影すると、まるでジオラマを写真に収めたような、ちっちゃな村である。

ブランシオン城の反対側に、石造りのロマネスク様式の教会が見えた。

これが「天国にいちばん近い教会」、サン=ピエール教会だ。

ブランシオン2

フランスの小さな村はどこもそうだが、村には人影がほとんど見られない。

村全体がひっそりとした中で、サン=ピエール教会はとても凛とした佇まいだった。

さっそく教会の中に入ってみる。

内壁には美しいフレスコ画が描かれている。宗教画のことはよくわからないが、その美しさは伝わってくる。

途中に、棺のようなものが置いてある。領主ブランシオン4世を祀るものらしい。

そして、後陣の窓から差し込む日差しが、教会内を柔らかく照らしていた。

ブランシオン3

教会の前は、芝生に覆われたテラスのような場所で、ブルゴーニュ=フランシュ=コンテの緑のパッチワークのような風景と、ブランシオンの麓の村、ル・ブレイユを望むことが出来る。

ここにも、ロマネスク様式の石造りの教会が建っていて、サン=ピエール教会の姉妹ではないかというくらい似ている。

ここも同じく、12世紀に建てられたもののようだ。

ブランシオン4

村にはたった1軒のオーベルジュがあり、ここがカフェ兼レストランとして営業している。

人影が全く見られない村だが、オーベルジュのドアを開けると、優しそうなマダムが出迎えてくれ、素朴だが美味しいランチでもてなしてくれた。

「天国にいちばん近い…」というのは、森村桂の旅行記に書かれているような「花が咲き乱れ果実がたわわに実る夢の島」という意味合いとは少し違う。

おそらく、緑豊かな葡萄畑が広がるブルゴーニュ=フランシュ=コンテの美しい風景と、小高い丘の上に建つ凛とした教会で、神様にいつでも会うことが出来る「天国の入口のような」ということなのかもしれない。

ブランシオン5

そう考えると、ブランシオンのサン=ピエール教会はまさしく「天国にいちばん近い教会」という言葉がふさわしい佇まいだ。

決して華美ではなく、どちらかというと素朴な教会だが、ブランシオンという小さくジオラマのような村で、800年もの間、凛として建ち続ける姿はその言葉がとても似合っている。

スケッチのモチーフになったかどうかはわからないが、訪れる前の疑問を払拭することが出来た点において、訪れた甲斐があったといえそうだ。

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